北アルプスの「剱岳」と「劔岳」と「剣岳」、どれが正しいか、ご存じですか? 書籍などで混在していることもあり、再確認するために、今更なのですが調べてみました。 「劒嶽」は旧表記で,陸地測量部1913年発行の地形図では「劔」が使われていたそうです。新田次郎氏原作の映画にもなった「劔岳・点の記」は、当時のこの旧表記を使っておられますね。 2004年発行の2万5000分の1地形図から,表記が「前剱」「剱御前」「剱岳」へと変更になり、現在に至っているとのこと。地元の上市町からの要請を受けて、立山町同意の上、変更になったそうです。 ですので、北アルプスの「つるぎだけ」は、正しくは、「剱岳」です。間違って「剣」と書かないように、覚えておこう。 戦後は、新字体に改めるよう、GHQにより指導されたようですが、「なんで、アルファベット使用の国の意向で、漢字まで変えられなきゃいけないんだよ」と、少し悔しい気持ちにもなります。戦後、漢字を廃止しローマ字にしようとする「漢字廃止論」まであったそうなので、漢字が残っているだけでも良かったとは思いますが。 と書きつつも、最近はパチパチとタイプばかりで、漢字をちゃんと書けなくなっている今日この頃、反省です。言語は思考の中核をなしており、漢字、ひらがな、カタカナを使い分けて生活することによって、日本人は独特の感性を磨いているように思います。 「劔岳・点の記」は、明治39年に測量官の柴崎芳太郎が後世に残した、点の記(三角点設定の記録)を題材に書かれた小説で、現代と比べると、はるかに厳しい明治時代の登山を垣間見れる作品でしたね。 映画では、発足当時の山岳会の様子も興味深くて、仲村トオルさんの登山服が面白かった。映像も綺麗で見ごたえがありました。 映画を観たときは剱岳ってすごい山だな、と自分とは無縁だと考えていたけれど、昨年9月にご縁があり登ってきました。 頂上からの景色は絶景でした。そのときの記録は、こちらのブログにあります。 その際、カニのタテバイでの滑落事故に遭遇し、救助の様子を一部始終見守り待機するという辛い経験を味わいました。 快晴の中、同日に同じ山を登り楽しんでいた方が、すぐ近くで滑落してしまった、そんなことを考えて、胸が痛くなりました。 泣きべそ気味でなんとか登頂すると、風もなく穏やかな360度の景色が広がっていました。 事故がまるでなかったかのように、多くの登山者がくつろいでいるなか、暫し放心状態で周りの山々を見つめていました。 立山信仰では、剱岳が「地獄の針の山・剣の山」として描かれており、越中の人々の間では登ってはいけない山になっていた可能性があったとのこと。 昔の人が現代の劔岳に登る多くの人々を見たら、さぞかし驚くだろうと思う。 私にとっては、登山の厳しさを噛みしめた劔岳でした。
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